【法的に検証してみた】仕事中に「やる気がないなら帰れ!」と言われて本当に帰った場合、その時間分の給料はもらえる?
最近はめっきり少なくなったと思いますが、昔の体育会系の人にはいまだに怒り文句として「帰れ!」と怒鳴る人がいらっしゃいます。
自分が小学校の時地域のサッカークラブでサッカーをやっていた時も、厳しいコーチなんかが「お前もういいよ、帰れよ」と怒り、「帰りません!まだやらせて下さい!」と懇願するというのが一種の様式美でした。
今考えたら小学生相手に優越的地位を振りかざして絶対気持ちよくなってたんだろうなぁ、キメェなぁと思います。
少年サッカーならまだ「そんなこともあったなぁ」で済むんですが、これがお金の発生する仕事だったらどうでしょうか。
我々若い世代などは、体育会系を経験してない人なんかは「帰れ!」「帰りません!」という様式美(というよりもはやコント笑)が通じない人も多いと思います。本当に帰っちゃう人もいると思います。
じゃあ、仕事で上司から「やる気がないなら帰れ!」と言われて本当に帰った場合、その時間分の給料、つまりその日に本来働くはずだった残りの時間分の給料は請求できるんでしょうか。法的に検討したいと思います。(免責事項: 当方あくまで法律勉強中の身ですので、内容には間違い等入っている可能性があります。許してね)
結論から言いますと、請求できます。
民法536条2項には、
「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなった時は、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。」
とあります。民法の世界では危険負担と呼ばれるものです。
労働とは、労働者が使用者(会社など)に対して労務を提供し、それに対して使用者が報酬を与えるという一種の契約です。そして、債権者=使用者、債務者=労働者という関係になります。
まず、「債権者の責めに帰すべき事由によって」とは、「使用者に落ち度があるような理由によって」ということです。
ここではまさに、使用者、つまり上司から「やる気がないなら帰れ」と言われたこと、つまり使用者による正当な理由のない労務受領拒否によって就労不能となることです。「やる気がない奴が労働することなどワシは認めん」というのは到底正当な理由とは言えませんから、当然に使用者に帰責事由が認められます。
次に、「債務を履行することができなくなった時は」とありますが、これはまさに、労務を提供することが不能になってしまった場合です。
「工場が燃えて働けなくなった」といった物理的な履行不能から、「上司に帰れと言われた」と言った社会通念上の履行不能でも認められます。
そして、「債権者は、反対給付の履行を拒むことができない」とあります。労働者は使用者(=債権者)のせいで働けなくなっているのだから、反対給付、つまり労働の対価としての給料をもらう権利があるということです。
というわけで、仕事で上司に「やる気がないなら帰れ!」と言われた場合、素直に帰りましょう。上司の正当事由のない命令によって労務提供が不可能になっているのですから、反対給付であるお給料は働かずとも入ってきます。
さらに、「やる気がないなら二度と会社に来るな!」と言われた場合には最高です。正当事由の無い無期限自宅待機を命じられたことになり、あなたは二度と会社に行かなくても給料をもらえることになります。
しかも、この状態を解消して欲しければ、上司や会社が「あれは間違っていた。もう一度会社に来てくれないか」とあなたに頭を下げなければいけません。これは気持ちよくてたまらないでしょう。すかさず訴訟して、休んでいた間の給料と精神的ダメージを受けた分の損害賠償をせしめ取りましょう(ただし、会社から恨まれて呪われる可能性あり。要検証)。
それでは皆さんも、上司のパワハラに負けず、時には訴訟もちらつかせて、強く生きていきましょう。